こじれてますねえ、森進一の「おふくろさん」騒動。
事情を知らない人もいるかもしれないので、まずは事の経緯を簡単に説明しておこう。そもそも騒動の発端は、森進一が代表曲「おふくろさん」のイントロに、「いつも心配かけてばかり いけない息子の僕でした…」というセリフを勝手に付け加えて歌っていたこと。それに対して、この曲の作詞家である川内康範(御歳86歳!)が「オレに何の連絡せず、勝手なことをするな」と猛抗議。「あの曲は、母に対する自分の気持ちが込められた大切な歌。『いけない息子』だなどというセリフはは、歌の心を無視している」と非難したのである。
これに当惑した森がうっかり、「あの歌は自分で言うのも何ですが“森進一のおふくろさん”になっていますからねえ」と本音を漏らし、会合をドタキャンしちゃったから、さあ大変。川内氏は「作詞家をバカにし、著作権を侵害する行為だ!」と大激怒。さすがに森進一も「これはヤバいぞ」と、手みやげを持って直接謝罪に出向くものの、門前払い。結果、川内氏は「もうお前にオレの歌は歌わせない」とJASRACに曲の差し止めを要求し、森もほとぼりが冷めるまで「おふくろさん」を封印することになった、というのだが…。
まあ一言で言えば「どっちもどっち」だよなあ(笑)
「いい歳した大人が子供じみたケンカかするなよ…」って感じ。
とはいえ、それじゃああまりにつまらないので、もう少し踏み込んで考えてみようと思い、過去の記事などを調べてみたのだが、とにかく今回の騒動、わからないことが多すぎるのである。
まず最初に、なぜ今頃になって川内氏が怒りだしたのか、ということ。そもそもこのセリフ、もう30年も前から付け加えられているらしいのだ。曲の発売は1971年、つまり今から36年前だから、きちんと歌われていたのは、たったの5〜6年だけ。短っ!
それにこれ、昨年一昨年と紅白でも歌われているのだ。そんな大舞台で披露されているのに、今まで全く気がつかなかったのだろうか。自分の曲を分身のように愛しているなら、もう少しそれがどう歌われているのか、メンテナンスにも気を配ってもいいのでは…。
しかもこれ、森進一のアドリブなのかと思ったら、保富康午という超大御所の作詞家が作詞し、同曲の作曲家である猪俣公章が曲をつけているのだ。思いっきりプロの仕業じゃん…。まったくもって、意味が分からん。
もちろん、川内氏の言い分が間違っているわけではないし、僕は必ずしも森進一の味方をしたいわけではない。自分が精魂込めて作詞した歌の頭に、勝手に自分の意図と違うセリフがつけられていたら怒るのは当然。そこに反論の余地はないし、っていうか、何でこんな事が今までまかり通ってきたのかが不思議なくらい。問題あるに決まってるじゃん。
ただ、一方で、曲の歌詞というのは、受け取る人次第でさまざまに意味合いを変えるものだとも思う。世の中にはいろんな「おふくろさん」がいるわけだし。もし、作詞家が何が何でも自分の思う「おふくろさん」像を徹底したいなら、自分自身で歌うしか手はないわけで、それを歌手に託している以上、まあある程度のぶれは仕方ないのでは、という気もする。仮に、これがメロディーのついた形ではなく、あくまで曲前のMCとして「僕の場合はおふくろに迷惑ばっかりかけて…、いけない息子でしたね。では聞いて下さい、『おふくろさん』です」ってスタイルだったら許されたのだろうか(笑)。
とまあ、いろいろ考えてみたのだが、結局この騒動をこじらせた一番の原因は、森進一の対応なんだと思う。作詞家が魂を削って生み出した歌を、歌い手が勝手に「オレのもの」だと宣言してしまったのが、大先生の癇に障ったのだろう。「歌手風情が、作詞家に楯突くとは何様のつもりだ。お前は恩を仇で返すのか」と。ま、ある意味、ものすごく情緒的な、これぞ演歌!これぞ浪花節!な展開ではあるけどさ(笑)。
でもね、「義理人情は大切に」という演歌の基本テーマを伝道すべき人たちが、いつまでも子供のケンカみたいなことを続けていると、演歌界全体のイメージダウンにつながっちゃうんじゃないかなあ。“人情”をうたい文句にしている割に「案外、懐狭いのね」って。それでなくても、演歌の売り上げは年々落ち込んで、相当ヤバいことになっているみたいだし。とにかく早い段階で冷静に話し合って、穏便に解決してほしいものである。
とはいえ、僕の場合、この話を聞いて真っ先に心配になったのは、森進一じゃなくてコロッケなんだけどね。この騒動のせいで、コロッケの「森進一」が見れなくなるとしたら大問題。あれはあれで日本の宝ではなかろうか。
どうか作詞家先生、コロッケの方は大目にみてやって下さいませ。
2007年03月07日
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